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岡山地方裁判所 昭和42年(行ク)1号 決定 1967年9月18日

申立人

鳥越菅夫

被申立人

岡山県教育委員会

主文

本件申立を却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

事実

一  本件申立の趣旨は、「被申立人が昭和四〇年七月三一日付でなした申立人に対する退職処分は、当庁昭和四二年(行ウ)第一号退職処分取消請求事件の本案判決が確定するまで、その効力を停止する。」というのであつて、その理由の要旨は次のとおりである。

(一)  申立人は、岡山県吉備郡昭和町富山小学校に在職中、昭和四〇年七月三一日付で被申立人から依願退職処分に付されたが、右退職処分は、申立人の勧しよう(優遇)退職願を故意に無視して発せられた違法な処分であつて取消さるべきであるから、申立人は、本案として、昭和四二年二月二日当裁判所に対し、被申立人を相手に、右退職処分取消の行政訴訟を提起し、右は当庁昭和四二年(行ウ)第一号退職処分取消請求事件として係属している。

(二)  申立人は、右退職処分以来収入の道を完全にとざされ、現在ではわずかな貯えも費消し尽して、妻子とも生活に困窮している。

よつて、申立の趣旨記載の決定を求める。

二  被申立人の意見の要旨は次のとおりである。

(一)  右退職処分は、昭和三九年度末に、被申立人が、申立人に対し、岡山県職員の退職手当に関する条例第五条による優遇措置はできない旨を伝えて、退職を勧しようしたところ、数回の話合いの末、右優遇措置をせず、昭和四〇年七月三一日に退職するということで当事者間に合意が成立し、その後申立人から退職願が提出されたので、右退職願に基づいてなされたものであつて、申立人の意思を無視してなしたものではないから、適法な処分である。

(二)  申立人は、千葉県松戸市に土地を購入して住宅の建築にとりかかつているぐらいであつて、生活に困つているとはみうけられない。

よつて、本件申立は却下さるべきである。

三  当裁判所の判断は次のとおりである。

疎明資料によれば、申立人は、昭和二年一月から岡山県下の小学校教諭の職にあつたが、昭和四〇年七月二五日被申立人に対し退職理由を「勧しようによる」と記載して退職願を提出したところ、同月三一日付で被申立人から前記優遇措置を併わない依願退職処分に付されたこと、右退職処分当時、申立人は、満六三才で、月額六万五、六九〇円の給与を支給されていたこと、および、申立人の家族、妻および子供五人(二男二八才、三男二六才、四男二四才、長女二一才、次女一八才)のうち少なくとも二男、四男および長女はすでに就職していることが一応認められる。

ところで申立人は、貯えも最早底をつき、日常の生活費にも不自由している(申立人作成の報告書)というのであるが、申立人の年令、在職当時の月収入および退職すること自体は申立人の当然予期していた事柄であることなどから考えると、申立人としてはすでに退職後の生活のめやすもついていたと思われ、独立している子供もいることなどを考えあわせると、申立人の右報告書の記載内容はそのまま事実として受取ることができず、この点につき他に疎明がない以上、本件申立は、行政事件訴訟法二五条二項にいう必要性の要件を欠くというべきである。

よつて、本件申立を却下すべく、申立費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり決定する。

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